生える足がない

家に帰ってきたら、玄関でたくさん小さいカエルがびょこびょこ、びょこびょこしていたのでいつもより帰るのが10分くらい遅れてしまいました。家に帰ってきても、家に入らなきゃ、帰るって行為が行われたことにはならないんですね。親に怪訝な顔をされました。

そういえば最近夏の虫が鳴くのに対抗してゲコゲコ言ってる奴がいるなあと思っていましたが、あれはカエルだったんですね。ようく考えなくてもゲコゲコ言ってたらカエルだろって感じですけど私は気づいてなかったです。まだみぬラップバトルのように交互にゲコゲコビービーゲコゲコビービー主張していたのが今更真に迫ってきたのですよ。本当です。

私はおたまじゃくしが、いつカエルになるかこの歳になって初めて知りました。おたまじゃくしはいつもこっそりとオトナになっていて私がその瞬間をみることはついぞなかったのですが、あんだけ小さいカエルから考えるにきっと、今こそ、おたまじゃくしたちはこぞってオトナの階段を登っているに違いありません。

じめじめしていて、不快指数をしめすメモリが100回はぐるりとしそうなこの時期に、ようオトナになるなあと思いますがこれはもしや逆にツウなのかもしれないですね。

オトナになるのはきまって、夏休みが終わってから。というのが人間たちの常識の気がするのですが、どうでしょうか。田舎のおばあちゃんの家で、都会っ子が揉まれ揉まれて糠床につけられて、しおしおとなるのが夏休みじゃないのでしょうか。都会っ子は黒く焼けてノースリーブのワンピースがよく似合う女の子と、山の中でカブトムシをとってる間に迷子になって、2人で泣きながらみた夜空を宝物にする。そうして一つオトナになるのが、コレ、鉄板なんじゃないか。そう思って生きてきました。

おたまじゃくしはオトナになるのに、足を生やして水からあがっていきますが、人間がオトナになるっていったいなんなんでしょうね。別にこれ以上、足は生えないし、あがっていく場所も特にないし。都会っ子は何をもってオトナになってるのか、夏休みは人を本当に変えるんですかね。

夏休みに手柄を上げられるのも、癪なので、カエルのように、梅雨のクソみたいな気候の中サラッとオトナになってしまいたいです。別に足はこれ以上いらないですけど。

そう思いながら、外で納豆巻きを食べていました。オトナになれなくても、梅雨でも、田舎におばあちゃんいなくても、納豆巻きは美味しい。